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ネットゲーム、シルバーレインにて銀誓館学園の生徒達と、その背後の日記。
July / 08 Tue 20:08 ×
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March / 31 Sat 19:57 ×
これはあの子がもう覚えていない過去の話。


BGM「ハレルヤ」 アンジェラ・アキ


「名前、私と司朗さんの名前を合わせたのが、いいと思うの」
「でも姓名判断なんかは、先にやってみたほうがいいんじゃないか?」
眠り続ける小さな命を抱きながら、彼女は色素の薄い長い金髪を揺らしていて、
ベッド脇で彼は、シンプルな丸椅子に座ってそれを見ながら考え込んでいた。
「ふふ、やだわ司朗さん。そんなの、あとから考えればいいじゃない」
「そ、そうか。そうだな」
「ああでも、遊と未と、司と朗じゃ、女の子の名前になりそうにないわね」
十何年も前の、よく晴れた綺麗な青空の冬。

―――――――――――――――――

「それじゃあ、明日のお昼までには、帰ってくるわね」
「最近、よく呼ばれてるけど、ろくに寝てないんじゃないか?」
心配の色が隠せない彼を見ながら、彼女はいつもの笑顔で一言。
「そんなことないわ、大丈夫」
「いや、俺から父さんに言っておくから、今日は休んだほうがいい。・・・父さんだって、悪人じゃない」
「大丈夫よ。司朗さんたら、私のタフさを知らないの?」
「・・・ねぇ、遊未。君はもう、あんな場所に行かなくてもいいんだ。俺だけじゃない、父さんも母さんも、遊司も居る」
「ええ、わかってる。でも、私が行かないと、駄目なのよ。行ってきます」
彼女は困ったような八の字眉で、やっぱり微笑って家を出る。
そんな会話が増えたのは、小さなあの子が三回目の誕生日を迎えた後。

―――――――――――――――――


「おとうさん」
「・・・何だい?」
「おとうさん、なかないで」
「・・・」
「おかあさんも、なかないでっていうよ」
「・・・そうだね、ありがとう、遊司」


―――――――――――――――――

「うーん・・・」
「難しいわね、こういうの」

「・・・ゆうじ」
「え?」
「遊未の遊を"ゆう"で、俺の司を"じ"って読んで遊司は、どうだろう・・・」
「やだ、男の子みたいな読み方じゃない」

「や、やっぱり。そうだよ、な。別のを考えよう」
「・・・でも、素敵。"遊びを司る"で、遊司。なんだか可愛いわ」
結局、姓名判断なんて気にせず、そうしましょうって言いながら母親が微笑って、
父親が照れ笑いをしながら、小さな彼女を抱きかかえたのは、今から十何年も前。


これはあの子が覚えていない過去の話。もう覚えていない思い出の話。
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