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ネットゲーム、シルバーレインにて銀誓館学園の生徒達と、その背後の日記。
May / 17 Fri 15:17 ×
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April / 04 Sat 02:37 ×
目の前の彼女が本当なのか、舞台の彼女が本当なのかは、僕にはどうしても判断がつかなかった。
でも多分、どっちも本当なのだと思う。

鳴り止まない拍手の中、改めて隣に座る彼に質問する。
「…あ、ご、ごめんなさい、お芝居見るのに夢中で、結局誰なのか、わかんなかった」
「…」
舞台の左端で観客にぶっきらぼうにお辞儀をする黒髪の鋭い目つきの男の子を、無口な父は静かに指差す。
優しいけど優柔不断な主人公を殴り飛ばして、強引にヒロインの元に駆けつけるよう説得するシーンが特に印象的だった気がする。
今年で中学生になるからそれと同時に入学なんだと聞いていたし、最近の子は成長が早いからそんなものかとも考えるけど、少なくとも彼は同年代で、探している子とは別人だと思っていた。身長が平均以下の自分が言うのもおかしいけど。
「あ、あの子、中学生なんだ。同じ年くらいだと思ってた」
そうかそうかと納得したところで、新しい疑問がわく。確か事前に聞いていた話によると、
「……えっと、女の子じゃ、なかったっけ」
「…まぁ、誰でも最初は、そう言う」
気にするな、という返事のあと、たった数秒、しばしの沈黙で。ん?
「え、あ、あの子女の子なの?」
舞台はちょうど幕が下りる中、役者達がすがすがしい表情で花束を持って手を振っていた。

こっちです、とスタッフさんに通された部屋の前のドアが軽い音を立てて開く。
「わ、天鳴さんだ、お久しぶりです!元気でした?あ、母にはもう会いました?父達は今日来れなかったんだけど『よろしく伝えといて』って。あ、はじめまして、もしかしてそちらが遊司さん?きゃー!」
目の前に居るのは沢山の花束に囲まれた、赤茶の髪の女の子だった。
「あ、うん、えっと、こ、こんにちは、はじめまして」
「はじめまして、こんにちは!大学生だって聞いてたからちょっと驚いてるの、思ってたよりすごくかわいい感じの人だったから」
うれしそうにきらきら笑う彼女の表情には、さっきの男の子が見当たらずとまどってしまった。
「え、えっと、舞台、素敵だったよ。僕も、その、驚いちゃって」
よく言われますと楽しそうに受け答えする彼女を見ていると、『鈴を鳴らすように笑う』という言葉がしっくり来る。
「褒めてくれてありがとう、今回はとても難しかったから、そういう言葉がうれしいの。ていうか大体、12歳の女の子に17歳の男役ってこと自体かなり無理あると思うんですよね、身長とか」
「う、うん。でも、君だったら、そんなことないと思うよ」
平均より身長の高そうな彼女と話すには少し見上げる形になる。
「……話の腰を折って申し訳ないが、そろそろ、本題に入った方がいいんじゃないかと思う」
静かな口調で話を進めるよう促され、自分の役目を思い出す。
「そ、そうだ、えと、このあとお話、大丈夫だよね?」
「はい、学校の話ですよね、基本的なことは教えてもらったから知ってるけど、詳しい学園生活はOBに聞くのが一番らしいし」
「うん、えっと、じゃあ、これからよろしくね、えっと、『しん』ちゃん、でいいのかな?」
「あ、いえいえ、『あらた』って読むんです。めんどくさい名前でしょ?呼び方は何でもいいのよ、こちらこそよろしくお願いしますね、先輩」
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